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連載|ものづくりの視点

「省エネルギー」と「快適性」の追求

東條 隆郎

日本ではこの10年ほどの間に、建築における「省エネルギー・省CO2」に対する取り組みがかなりのスピードで進み、成果を上げている。この「省エネルギー・省CO2」と室内の「快適性」について、オフィスビルに特化して考えてみたい。

エネルギー削減のポイントとして挙げられるのは外装、空調そして照明である。まず、外装については、近年その性能に顕著な向上が見られる。かつては寒冷地の開口部にしか採用されていなかったペアガラスだが、現在は高性能Low-Eペアガラスが多くの建物で標準として採用されている。その性能は、単板ガラスに比べ、熱貫流率で約3~4倍、遮熱性能で約2倍である。通常、オフィスビルの外壁に占めるガラス面積の割合は4~6割であるから、日射負荷の低減の効果は大きいと言える。また、ライトシェルフ、羽根の角度を自動制御するブラインドの採用など、日射遮蔽と昼光利用を両立する試みも進んでいる。その上、開閉でき換気が可能な窓が見直されたり、自然換気ができる機能を持った開口部の設置も増えてきている。

環境先進国と言われるドイツでは、採光、特に建物の内部まで入る外光や自然換気が「快適な執務環境」を作る上で重要視されている。フランクフルトにあるノーマン・フォスターが設計した超高層オフィスビル「コメルツバンク」は、サスティナブル建築として知られている。三角形のプランの中央に配置されたアトリウムに入ってくる外光と外気はこのアトリウムからオフィス内部に取り込まれるように計画されている。執務室は有効な自然光が届く奥行きとなっており、通常日中はこの自然光とタスクライトをベースとした光環境となっている。

もう一つ、この建物で注目すべきは空調である。近年ドイツ、スイスなどを中心としてヨーロッパで「輻射空調」が広がりつつある。他の空調方式との大きな違いは、冷風や温風による空調ではなく天井に設置する輻射パネルに冷温水を循環させ、熱が高い温度から低い温度に移動する性質「輻射」を利用して空調することにある。最大の特徴は、風による気流感がなく、また吹き出し音がないため静かであり、室内の温度が均一になることである。このことからオフィス環境の「快適性」の観点から非常に優れた空調方式であると言える。また、「省エネルギー・省CO2」の観点においても「熱」の移動に「水」を使うことで「空気」より熱移動の効率がよく、使用する冷水の温度が空調方式より比較的高いため、冷水をつくり出すエネルギーも少なくて済む点でも優れている。また、冬期、中間期にはフリークーリングによる冷水も活用できることからさらなる省エネルギーとなる。日本においてはデシカント外調機を使うなど湿度コントロールに工夫がいるが、オフィスビルの空調方式としてこの「輻射空調」が注目され始めている。

照明では東日本大震災以降節電に対する意識が高まり、LED照明への移行が進んでいる。同時にLED照明器具の価格も下がっており、新築のみならず既存の建物でもLED照明への切り替えが進んでいる。また、オフィスの照明環境は、従来、全般照明方式で照度700lx~1000lxであったものが、センサーを利用することにより適正な照度設定を行ったり、窓側の明るさの変化に伴って自動調光するなど、大きな「省エネルギー」効果を出している。タスク・アンビエント照明を採用した場合(アンビエント300lx、タスク700lx)全般照明方式と比較すると40%~50%削減することができる。加えて、自由に照度や色温度を変えられるなど方式が多様化してきており、「省エネルギー」のみならず「快適」な照明環境づくりが始まっている。

これまで述べてきたように、「省エネルギー・省CO2」とオフィスビル室内の温熱環境と光環境における「快適性」は同時に追求できる。オフィスワーカーにとって、オフィスは1日の1/3を過ごす場である。業務内容や職種により求められる内容は異なるものの、「快適な執務環境」づくりにより一層の取り組みを進めたいと考えている。

「省エネルギー」と「快適性」の追求