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連載|ものづくりの視点

実効性のある「BCP」とするために

原田 仁

昨年12月、内閣府中央防災会議の作業部会から、首都直下地震が起きた際の被害想定の報告が公表された。人的被害は最大約23,000人に達し、約95兆円という甚大な経済的被害が引き起こされるというものである。併せて、作業部会は建物の耐震化や出火防止対策の強化で、被害は十分の一に減らせるとの分析も報告している。内閣府では同日、首都直下地震を想定した政府の事業継続計画(以下、BCP)案を発表し、自家発電用燃料や食料、水を1週間分程度備蓄するよう各省庁に求めた。

また、国内主要100社を対象に行った調査(2013年12月16日付朝日新聞より)によると、主要拠点の耐震化が済んでいる企業は2/3に留まっており、BCPの見直しにより災害対策を強化しているものの、肝心の建物の対策の遅れがはっきりした。耐震ばかりではなく、自家発電用燃料の備蓄は3日分以下が約半数、1週間分以上の水を備蓄しているのは3社のみと極めて少ない。一方、BCPを策定している企業は約90%と高く、組織や訓練計画などソフト面での対策は進んでいるが、ハード面の遅れが目立つ。

BCPは、それぞれの企業や組織によって何を求めるか様々であり、画一的に決めることができない。地震への対応について言えば、震災の影響が少ない地域に代替拠点を設けていれば、それほど多くの備蓄は必要ないが、代替拠点がないケースでは、企業(組織)ごとに事業継続に必要な空間やエネルギー、水などの確保量は異なる。つまり、同じ機能を有する建物であっても、それを使う企業によって事業継続の達成度が変わってくる。

多くの企業ではBCP策定に当たり、実際の避難訓練や参集訓練などをもとに、災害時に必要な人員の確保と対応日数を計画している。その結果として、備蓄する発電量、燃料、水量などを決定するが、万が一思うように帰宅できない社員が多く発生する場合や、帰宅困難者を受け入れるケースでは、必要となる備蓄量は大きく変化する。所在地の立地や交通機関の状況にも配慮しなければならない。東日本大震災ではサプライチェーンの寸断が発生し、思わぬ事業停滞を起こしたことから、自社以外からの影響も考慮しなければならない。さらに、首都直下地震ばかりではなく、南海トラフ巨大地震への対応も早急に行わなければならない。東海・東南海・南海が連動した場合の影響は、その範囲と規模が東日本大震災を大幅に上回ることから、地震後の復旧は、事前の対策により被害を如何に少なくするかにかかっている。そして、経済活動を速やかに再開するには、事業継続にかかわるあらゆる準備が必要なことは論を待たない。

私が所属する公益社団法人空気調和・衛生工学会では、災害時のBCP検証法について標準化作業を進めている。これは建築物に対するその所有者や利用者の様々な要求を整理し、建築に必要なBCPをハード面からその性能を誰もが判断できるようにすることを目指している。新築する際には設計与件を整理し、見落としのないようにするとともに、充足度を確認する。既存の建物については、ハード面からBCP達成度を評価するとともに、不十分な部位を明確にし、改修計画策定の支援ツールとなることを目指している。

今後30年以内に震度6弱以上の地震が発生する確率は、関東から四国まで広範囲で非常に高い予測が発表された。日本の地理的特徴から、また地震を無くすことはできない以上、確率に振り回されることなく、普段からの準備を進めることが第一である。BCPに対する意識が高まるなか、従来の防災対応に加え、重要な事業の継続を図るための要求は今後さらに増大すると思わる。建築に携わる者の役割は大きく、BCPを実効性のあるものとするためにも、企業や組織の様々な要求に応えられるよう多岐にわたり取り組みを進めていきたい。

実効性のある「BCP」とするために