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連載|ものづくりの視点

設計者に求められる高い「環境意識」

東條 隆郎

2015年12月12日、パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で2020年以降の世界全体で取り組む地球温暖化対策「パリ協定」が採択された。これは、1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)で採択された「京都議定書」以来18年ぶりに合意された画期的な国際的取り決めである。「京都議定書」では先進国に対し温室効果ガス削減が義務付けられており、途上国には義務付けがなかった。これを理由に当時最大の排出国であったアメリカが離脱するなど不十分な取り決めとなっていた。

今回の「パリ協定」ではアメリカに加え、現在の最大排出国である中国も参加した。先進国と途上国を合わせて196もの国々が参加し法的枠組みとなったことは、地球の温暖化をこれ以上悪化させず持続可能な環境をつくる上で大変重要な合意であり、「地球温暖化防止」という姿勢が全世界で共有されたことは大変意義深い。合意内容の要点は、先進国と途上国共に削減目標の提出と対策の実施を申告し、5年ごとに見直し、改善すること。2050年には人為的な温室効果ガスの排出と生態系吸収を均衡させること。ひいては、産業革命前からの平均気温上昇を2度より十分に低くなるようにすること。さらに1.5度以内に抑えるこの必要性にも言及している。全世界が自国の利害を超えて共通の理念を持つことを最優先した成果であり、それだけ現在の地球環境が危機的な状況にあるということである。

ここで日本の現状を見てみる。日本全体のエネルギー消費量のうち、運輸部門と産業部門を合わせるとおおよそ2分の1を占め減少傾向であるのに対し、民生(業務・家庭)部門は約3分の1で増加傾向にある。(国土交通省:「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」資料より)その民生部門の中で建設に関しては、建物の建設過程に消費されるエネルギーと建物が使われ始めてから消費されるものがあり、この両方のエネルギー消費量は「設計段階」でほぼ決定される。建物の消費エネルギーを削減することは建築物のランニングコストを削減することにもなり、建物の所有者にもメリットが大きい。日本ではここ数年、建築物の省エネルギー化への積極的な取り組みや技術の進歩などが飛躍的に進んでいる。今後さらに建物のZEB化やスマートシティなどの技術革新によりさらなる削減が進むとともに、「建物の長寿命化」にも取り組むことが求められる。

現在、建築物を構成する主要な材料はセメント、鉄などである。これらの材料を作り出すためには膨大なエネルギーが使われている。その膨大なエネルギーを消費した材料で出来上がった建築物を「長寿命化」することは結果的に温室効果ガスの削減に大いに寄与する。「長寿命化」のためには、建築に付帯する設備機器の老朽化対策だけでなく、建設当初とは建物の使われ方や所有者の要求が変化することも想定して、設計の段階であらかじめこれらに対応する方策を織り込むことも肝要である。

私たち設計者は、これからもハードだけではなくソフトを含め「長寿命化」に積極的に関わっていくこと、また、設計段階だけでなく建物竣工後も関わり続けることが必要である。次世代に快適な地球環境を伝え、残していくためにも高い「環境意識」を持ち、取り組むことが求められている。

設計者に求められる高い「環境意識」