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連載|ものづくりの視点

ヒューマンモビリティ 新たな地域公共交通への期待

河合 康之

日本再興のために地方創生が重要政策課題とされているものの、その課題解決に向けての動きはやや緩慢であることは否めない。地方創生を支えるインフラ整備の中では、国土形成計画等でも強く打ち出されている高速交通網整備を契機としたコンパクト+ネットワーク形成が、将来の日本の国土・まちの成長に大きく関与することは論を待たない。

全国ベースでの高速交通網整備では、北陸新幹線の金沢までの開業、北海道新幹線の函館までの開業による沿線地域の活性化については広く報道され、今後の延伸開業を睨んだまちづくりも進められている。さらに期待が寄せられているリニア新幹線整備も本格的に着手されており、財政投融資制度を活用することで、名古屋以西の大阪延伸もJR東海により早期着手することが表明されている。

まちづくりと一体になった「えき・まち」空間の再整備は都市の集約化、今後の都市再生・成長にも大きく影響する。新幹線整備に代表される全国ベースの鉄道網整備によるものだけでなく、富山市のLRT(次世代型路面電車)導入によるまちづくりは地域公共交通の先進例として、交通政策だけでなく住宅政策・観光施策等にも相乗効果となって表れている。この成功によって、自動車に過度に依存した状況から、新たな地域公共交通の整備・再生によるコンパクトシティー形成に大きく転換したまちづくりの検討が全国各地で進められている。また、海外においてもこういったまちづくりが公共交通指向型開発(TOD)として注目されており、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックでのLRTの姿は目に新しく、ヨーロッパだけにとどまらす世界にも拡がりを見せている。

日本では新たな展開として、宇都宮周辺のLRT計画が国土交通大臣により認可された。LRT計画では、①LRT敷設する空間確保、②既存交通事業者との役割分担、③事業費の調達が共通課題とされている。地元合意が重要で、大きな紆余曲折を経ての事業認可であったが、市街地の拡大を抑えコンパクトな都市構造への転換を目的とした事業に今後も注目したい。
また、LRTだけにとどまらす、中村文彦横浜国立大学副学長他による著書『バスがまちを変えていく~BRTの導入計画作法~』では、海外での先進例が紹介されている。まちづくりにおける公共交通機関のメニューも充実をしてきており、多くの自治体で構想されているLRT・BRT(バス高速輸送システム)導入がひとつひとつ課題を解決し、整備され、皆に愛される交通機関、まちになることを期待したい。

こうした動きの中で、私が大変期待しているものが、東京都と京成バスにより整備・運行が予定されている都心と臨海副都心とを結ぶBRT計画である。諸々の課題はあるものの、2020年の東京オリンピック・パラリンピックをターゲットにして、BRT運行開始に向けて計画が進められている。政府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」での公共交通における「安全・安心」のための自動走行システム等の技術開発(ART)を実証的に導入する計画としているとともに、車両・駅施設もシンボル性を持ち洗練されたデザインが検討されている。ヒューマンモビリティとして、機能もデザインも新たな時代の幕開けを感じさせるBRTの登場に大いに期待している。両者が標榜するトータルデザインコンセプト「路線の魅力が創る地域への愛着と誇りの醸成」の実現を待ちたい。
さらに首都圏で進む3つの環状道路の整備により、都心部では自動車交通量が減少しており、これに呼応した道路空間の再配分を契機に、旧都バス路線でもLRT・BRTの導入の可能性が高まっており、これをきっかけとしたまちづくりも大きく進展するだろう。

ヒューマンモビリティ 新たな地域公共交通への期待