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特集 GINZA KABUKIZA

機械設備設計
先代のデザインを活かして
より高機能な建物に

機械設備設計部 中村 厚
電気設備設計
歌舞伎専用劇場ならではの
機能を集約

設備設計統括部 山口 泰規

先代歌舞伎座のサイズに合わせるため、あらかじめ決められた寸法に空調や衛生設備を計画するのも大変な作業となった。
伝統を活かしながら、より高機能な建物に生まれ変わらせるため、機械設備、電気設備の担当者が それぞれ奮闘。
三菱地所設計の持つ豊富な経験を活かし、各方面からの細やかなリクエストにも対応していった…。

先代のデザインを活かしてより高機能な建物に
機械設備設計担当 機械設備設計部 中村 厚

先代歌舞伎座のデザインを継承しながら最新の設備を導入することが今回のプロジェクトの大きなテーマでした。まったく新しい劇場を建てるのであれば、建築・設備が一体となって空間構成を検討できますが、今回の計画では劇場の空間構成がある程度決められた中で高いレベルの要求性能を満足する設備を計画する難しさがありました。

当社の意匠関係のスタッフと何度も打ち合せを重ねて設計を行いました。機械設備は空調・衛生設備あわせて計4社で施工しましたが、多くの課題に対して施工者とも工事の直前まで膨大な時間をかけて打ち合せを繰り返しました。苦労は多かったのですが、先代歌舞伎座のデザインを生かし、より高機能な建物として生まれ変わらせるという思いは全員に共通していたので、同じベクトルに向かって、粘り強く問題を一つずつクリアしていくことができたと思います。

空調のシミュレーションを気流実験で検証

劇場内1、2階席の後方は天井が非常に低く、また、先代歌舞伎座のデザインを継承した特殊な折り上げ天井となっています。劇場内は非常に多くの空調風量の供給が必要ですが、天井のデザインに極力配慮しながら、空間を均一な温熱環境に保つ必要があります。もちろん、「風が体に当たる」とか「暑い・寒い」というクレームがあってはいけません。事業主からも、この点の改善を求められており、温度・気流・低騒音に対処するために気流実験を行って、検証を重ねながら計画を詰めました。模型実験で自らが体感しながらシミュレーションをしたのです。歌舞伎の公演は一般の演劇よりも長く、4時間ほど客席に座ることを想定する必要があります。空調がお客様に不快を与えないように、妥協はできませんでした。トイレに関しては、特に和装の女性が多く来場される点を考慮しています。着物姿でストレスを感じずにご利用していただけるよう、例えば、洗面台に手をかざしても袂が濡れないようにするなど、設計者として色々と勉強する点が多かったです。また、楽屋の空調には、あえて家庭用エアコンを導入し、細やかな空調コントロールが可能なようにしました。役者さんにとって公演中の楽屋は家と同じ意味合いを持っていますから。

劇場の空調シミュレーション図(施工段階での検討)

検討課題が多く、施工にとっては工期の面でも厳しい状態でしたが、設計側と施工側の意思統一がしっかりできたことが印象に残っています。数多くの人とつながることで、自分自身も成長できました。設備は設計と施工監理に加えて引き渡し後の運用フォローまでが一体の業務です。今後も設備運用のヒアリングや検証を行って、より使いやすい運用提案につなげていきたいと思います。

歌舞伎専用劇場ならではの機能を集約
電気設備設計担当 設備設計統括部 山口 泰規

今回のプロジェクトの場合、松竹様、その中でも歌舞伎座開発推進室を中心に不動産部や演劇部、また歌舞伎座様など、事業主にさまざまなセクションがあり、個別のご要望がありました。セクションにより運営目的が異なりますのでご要望も一元的ではなく、まずは、それぞれから届く情報を我々がしっかり整理、共有することがポイントでした。例えば「演目によっては煙を焚くのでそのための電源を用意してほしい」など歌舞伎専用劇場ならではの演出を想定した細かいオーダーがたくさんありました。通常の劇場では公演用途が汎用的なので、そこまでの細かい注文はありません。一つでも要求が実現されなくては大変なので、とにかく情報共有が大切でした。特に電気設備は、設備が多岐にわたるため、各部門と密に連携することで歌舞伎専用劇場としての機能が集約できたと思います。舞台設備を含むさまざまな設備をつなぐ役割が電気設備の重要な役割であり、そこが欠けていると劇場運営に支障をきたすことにもなりかねませんからね。

LED間接照明

劇場の客席にLED間接照明を用いた初の試み

歌舞伎専用劇場として客席照明はハイレベルなものを求められます。舞台照明とうまく調和させ、よりスムーズな調光を実現しないといけない。しかし、当初採用を予定していたLED照明の方式ではうまく対応できませんでした。低照度のスムーズな調光ができないとか出力が弱いなど、まだ計画当時のLEDの技術は事業主のご要望に応えられるものではありませんでした。LED照明の転換期でもあったため、機器採用のタイミングをぎりぎりまで見極めました。発光部と電源部は各々得意とするメーカが異なりますので、あらゆる情報を頼りにしながら、調光制御や出力面をクリアする新方式採用の可能性を探りました。光源と電源部の組み合わせを替えながら数多くの検証を行い、ようやく新方式のものでご要望を満たす照明設備ができました。歌舞伎で要求される柔らかく均一な光をLED間接照明で実現することは新たな試みでありリスクもありましたが、非常にすばらしい照明効果とメンテナンス性の両立を実現し、電気設備の点では大きな特徴となりました。

間接照明の詳細納まり図

劇場の舞台設備の部分は我々の担当ではありませんでしたが、劇場興行を支えるためのさまざまな設備システムは我々が計画しました。たとえば停電や災害時に観客やオフィスの利用者の安全を確保するための送電計画やさまざまな負荷設備計画、火災を感知し避難を促す防災設備計画、観客がスムーズに避難するための動線制御の仕組みなども計画しました。また、通常の建物は同一変電所から受電しますが、ここでは別の変電所からもう1回線受電するなど、変電所単位での災害・事故への備えも高める工夫もしました。

歌舞伎座は高層オフィスに劇場が内包された建物であり設備には限られた空間しか残されていませんでした。サイズが決まっている限られた空間にすべての設備を納めてプランニングするのはなかなか大変で、まさにパズルのような作業でした。「うまくできて当然」というのが設備の仕事です。そして、歌舞伎座の興行が日々滞りなく行われていることが我々の誇りでもあります。

※本特集は2013年に取りまとめたものです。各担当者の肩書きなどは、その当時のものです。