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特集 GINZA KABUKIZA

都市計画
複合文化拠点としての
「新生歌舞伎座」を打ち出した

都市開発マネジメント部 冨田 剛史
ランドスケープ
建物と庭園が一体となる
「庭屋一如」をテーマに

都市環境計画部 松尾 教徳

歌舞伎座プロジェクトでは、その基礎にある「都市再生計画」も重要な要素である。
単に劇場を建て替えるだけではない、「複合文化拠点」としての新生歌舞伎座というコンセプトがそのカギとなった。
回遊式の和風庭園を屋上に出現させて大きな話題を呼んだが、それも計画の核を担うもの。
それぞれの担当者に、プロジェクトにかけた想いを聞いた。

複合文化拠点としての「新生歌舞伎座」を打ち出した
都市計画担当 都市開発マネジメント部 冨田 剛史

今回の歌舞伎座プロジェクトは、「都市再生特別地区(特区)」の新たなケースと言えます。特区とは、民間の創意工夫を活かした都市再生効果の大きい再開発計画に対し、都市計画の特例により自由度の高い計画を実現させるものです。事業者側と一緒に都市再生の観点から提案を練り上げ、行政側との意見を擦り合わせながら、全体の計画をうまくまとめプロジェクトを推進させていくのが我々の役目です。設計の前段階での仕事ですからスパンは長くなり、今回も7年ほど前から計画に着手しました。行政から「単なる歌舞伎座の建替えでは特区として認められない」「都市再生への貢献、地域貢献をどのように考えるのか」といった問いかけの中で協議が始まりました。

歌舞伎座とその周辺エリア

そこで、我々は劇場の建て替えに留まらず、「複合文化拠点」としての新生歌舞伎座というコンセプトを打ち出しました。つまり、歌舞伎を中心とした文化の創造と発信、国際交流や啓発機能の一体的な整備を行うということ。具体的には、屋上庭園と一体化した国際文化交流拠点を設置して歌舞伎座を訪れる人々を迎える交流の場とする、そこには歌舞伎の歴史に触れられるギャラリーをつくる。「歌舞伎の裾野を広げたい」という考えに対しても、歌舞伎アカデミーのような体験型学習や各種セミナーを行う施設を新設できるよう協議していきました。屋上庭園と地下広場に関しては、オープンスペースですので、わかりやすい動線にし、直接アクセスできるエレベーターを設置しました。

災害時には大多数の帰宅困難者を受け入れ可能

歌舞伎座には、もともと地域のランドマーク的な一面もありました。加えて新生歌舞伎座は、「都市基盤整備」としての要素も重視しています。地下鉄の東銀座駅から直接アクセス可能な地下広場「木挽町広場」を設け、そこが晴海通りや昭和通りへのネットワークの起点となります。環境性能の強化にも取り組み、太陽光発電を採用して災害時には補助動力としても使えるなど、さまざまな工夫を盛り込みました。また、災害時には帰宅困難者対策として劇場を開放し、地下広場を一時避難場所として利用することも計画に含めました。水や非常食なども数多く備蓄するなど、地域の防災拠点としての役割も担っているのです。また、敷地内に留まらず、木挽町通りや地下鉄コンコースなど周辺環境の整備も行いました。目立つ場所から本当に細かい部分まで、綿密に配慮したのが、今回の都市計画なのです。

完成後、歌舞伎座に人が溢れんばかりに賑わっている様子を見て、本当に感激しました。歌舞伎座の持つパワーを改めて実感できました。もし郊外移転という選択なら歌舞伎座が新しくなったことだけになりますが、やはり、銀座のあの場所で建て替えが行われ、歌舞伎座周辺の地域へも賑わいが広がったことで、都市再生プロジェクトの意義を証明できたと思っています。

地下広場「木挽町広場」

建物と庭園が一体となる「庭屋一如」をテーマに
ランドスケープ担当 都市環境計画部 松尾 教徳

屋上庭園計画を進めていた最初の頃は、歌舞伎座の持つイメージを表現した特徴的な庭園にしたいとも考えました。しかし、歌舞伎座の持つ国際文化交流機能を意識し、庭園はさまざまな人たちが交流する “おもてなしの場”であるとの思いに至りました。そこで、建物と庭園が一体となった空間づくりを行うことこそ重要と考え、「庭屋一如(ていおくいちにょ)」を庭園のテーマに計画を進めたのです。

屋上庭園

庭が主張するのではなく、ここを訪れた人びとが自由に出入りし、くつろぐことのできる空間にすることを第一に心がけ、回遊式庭園とし、「銀茶会」などのイベント利用も考慮して芝生を植栽しています。添景物として歌舞伎作者の河竹黙阿弥の石灯籠と手水鉢が寄贈され、さらに第四期歌舞伎座の鬼瓦や平瓦も配置しています。歌舞伎の歴史と伝統を印象付ける要素により、記憶の継承という意味を持たせることができたと思います。

幅24m、奥行き19mの庭は決して広いスペースではありませんが、テラス側には光悦寺垣や御簾垣で空間を仕切り枯山水を眺める庭を演出しています。建物の内部からの景観も意識し、近景、中景、遠景に添景木を配置、高さの変化をつけて奥行き感を演出しました。建物と庭園のレベル差をなくして、バリアフリーとしたことでより一層の一体感が演出できたと思います。また、今回は事業主から、シダレザクラとモミジ、ネムノキを入れてほしいとのご要望があり、茨城の植木生産地まで出向いてお客様とともに樹木検査を行いました。実際に樹を見ていただいてイメージを共有できたことは意義深かったです。

通常より厳しい荷重条件を創意工夫でクリア

通常の屋上庭園の場合、1平方メートル当たり1〜1.5トンの荷重を見込むのですが、今回は大空間の劇場屋根なので0.6トン以下という非常に厳しい荷重条件でした。そこで植栽や土、石、添景物の想定重量を計算し、徹底的に積載荷重の分散化を図っています。石灯籠や慰霊碑などの重量物は梁や柱の上に配置し、土は比重の軽い人工軽量土壌を使うなど素材も工夫しました。また、庭園内の排水は最下層部に全面排水層を設け、雨水、灌水が植栽土壌内に有効還元され、その余剰水が排水される仕組みも採用しました。

苦労もありましたが、共同設計者のスタッフをはじめ、社内の各担当者からも多くの助言と協力を得られました。さらに施工者の尽力によって歌舞伎座の趣深い建物と一体になった、落ち着いた和風庭園を完成させることができました。この庭園は一般に開放された空間です。オープン以来、連日、多くの人で賑わっていますが、歌舞伎座タワーから見下ろすこともできるので、タワーの入居者の方にも親しんでいただければ嬉しいですね。今回のプロジェクトで屋上庭園を担当したことを心から誇りに思っています。

歌舞伎座ギャラリーより屋上庭園を望む

※本特集は2013年に取りまとめたものです。各担当者の肩書きなどは、その当時のものです。