WORKS

Vol.3

環境

Air-Soarer 変風量コアンダ空調システムを実現する風速一定器具

2019/3/29

天井を這わせて空気を届けるスゴ技。

省エネルギーと建築コスト低減の両立

ある程度の規模のオフィスでは、空間全体に空調空気を届けるためのダクトが不可欠——この常識を覆す技術が生まれました。自律的に開閉する機構をもった壁面の吹き出し口からの気流は、天井を這い、前へ前へと進んでいって部屋の奥まで届きます。風量を減らしても均一な空調効果が得られるため、搬送動力削減による省エネルギー化が見込めるほか、天井裏のダクトワークが不要になることで階高やコストを抑えることも可能。設備の合理化と空間意匠の可能性を拡げてゆきます。

自律式風速一定器具「Air-Soarer」を利用した変風量コアンダ空調のイメージ

コアンダ効果で天井を這う

空間が大きくなると、空調空気の局所滞留を防ぐためにダクトを設置して吹き出し口を分散し、均一な環境を実現するのが空調技術です。しかしこのダクトを使わず、片側の壁からの吹き出しだけで均一な空気環境を生む方法はあるのでしょうか?そこで注目したのが「コアンダ効果」という原理です。これは、気体や液体の噴流の軌道が近くの壁面に吸い寄せられる現象のこと。天井面近くで空気を吹き出すことで、気流は天井を這い、落下が抑制されて、部屋の奥まで送られてゆきます。しかし、一つ問題があります。空調能力を下げようと風量を減らせば、風速が落ちてコアンダ効果では保たず、吹き出し口の近くですぐに空気が落ちてしまうのです。

「Air-Soarer」の正面と側面


空調を弱にしても強にしても、風速を一定に保つ

そこで、風量によらず風速を一定に保つ技術として、「Air-Soarer」という器具が開発されました。基本原理は、風量が減ったときに吹き出し口を絞り、風量が増えたときに拡げること。しかも漸次的に、滑らかに作動します。センサーで風量を計測し、吹き出し口の形状を電動で自動制御する方法は考えられますが、ここではそのような大袈裟なシステムを使わないシンプルな仕組みに最大の特長があります。用いたのは、金属板と錘・回転軸で構成された可動羽。吹き出し口を塞いでいる錘付きの羽に空調空気が当たると、空気が羽を押し下げて口が開く仕組みです。空気量が多くなるほど吹き出し口は大きく開きます。わずかな空気量の違いで羽が的確に下がるかどうか。滑らかに動作するか。それらが試験され、最適な素材と構成方法が得られました。システムの心臓部にIT を使わない機械仕掛けを用いたことで、故障を減らしメンテナンス性能を上げています。

自立型吹出し口ユニット

ITを使わない機械仕掛け

Air-Soarer(上段)と一般吹出口(下段)の気流到達距離の比較実験。
吹き出し風量が減少するとAir-Soarerの羽根が倒れ、コアンダ効果が持続し、気流が部屋の奥まで届く。

空気環境の検証

どれほど空気調和がなされているか、実測検証を行いました。中規模オフィス程度の13m スパンの空間をモデルに、本システムを設置して片側から冷風を吹き出し、空調中の室温と風速を計測。居住域を床上1.7m とすると、そのエリアはすべて26.5 度(黄緑色)までに収まりました。冷気は4m 程度まで天井を這って緩やかに下降し、13m の奥まで空調ができています。

また、吹き出し口の開口部形状は正方形に近い方が周辺空気を巻き込まず、風速を維持することもわかりました。そこで吹き出し口の幅は500mm に抑え、横並びに数を増やすようにしています。

計測ポイントと断面位置

室中央断面の計測結果(温度分布)

産学連携による共同開発

「Air-Soarer」は、東京都千代田区の中規模事務所ビルにおけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実現のため、 企画構想段階から設計・施工・学術・メーカーの4者が産学連携して汎用性のある新技術として開発しました。 今後、意匠性の向上を図りつつ、さまざまな用途・空間で一層設計のバリエーションが広がることが期待されます。

「Air-Soarer」開発体制

設計|三菱地所設計

・システムの考案、製作
・検証全体のオーガナイザー

施工|新菱冷熱工業

・CFD(気流解析)による効果予測
・新菱冷熱中央研究所にて効果検証
・実物件へ導入後のコミッショニング

芝浦工業大学|建築環境設備研究室(秋元研究室)

・被験者実験による熱的快適性の検証
・知的生産性、省エネルギーの評価

空調設備機器メーカー|協立エアテック

・器具の開発・改良、実機製作
 変風量コアンダ空調システム
[特許登録] 登録番号——特許第 6453951 号 
[商標出願中]自律式風速一定器具「Air-Soarer」

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